辻音楽師な日々

現代の竪琴「ライア」を弾いています。              BBS http://rara.jp/leier

思い出話

私が小さなこどものころ

街に出ると壁が焦げていたり 曲がった鉄骨が
むき出しになった建物がたくさんありました
電車に乗ると足や手を失ったひと皮膚がケロイドに
なった人がたくさんいました

大勢人が集まるところには兵隊の服を着て
ござに座っているおじさんもいました
時々 おじさんの前に置かれたかごにお金を入れる人がいました

それから、電車の中で頭の大きさがこどもぐらいの大人によく会いました
(胎内被曝による後遺症で「原爆小頭症」と呼ばれています)
川のそばには、トタンや板でできた小さくて今にも壊れそうなおうちが
たくさんありました


それらはみんな、「あたりまえ」の光景で
私たちは、当たり前にそこで、遊んでいました。
見慣れたふるさとの景色でした。


少し大きくなって「あれは、みんな原爆のせいじゃ」と、
大人が教えてくれました。
「わしらがこどものときに戦争があって、原爆が落ちた」
それを聞いてもなお、恐怖感はなく、ただ、
「足が無くなると鬼ごっこで逃げられなくてこまるなぁ」
と思ったぐらいです。


小学校の低学年の時でした。3つ年上の子がふと言いました
「戦争って、どうやって始まるんかな?」
「これから、戦争しますって、町内放送で言うんかな?」
「誰が言うんかな」
「だれが戦争しようって決めるんかな」
いくら考えてもわかりませんでした。
それで、その晩、急に初めて「戦争」が
とても恐ろしくなったのです。


もし、明日、目が覚めてテレビをつけたら
おはよう!こどもショー」で、「ろばくん(着ぐるみ人形)」が
「今日から、戦争が始まります。みんな、足が無くならないよう
気をつけようね!」とか言ってたらどうしよう、
窓を開けて見たら、空一杯に飛行機やヘリコプターが飛んでいて、
上から「原爆」が落ちてくるのかもしれない!
と、ものすごくリアルな光景が浮かんでしまい、すごく怖くなりました。
(もっとも、それは、本物の戦闘機や爆弾とは似てもにつかぬ姿でしたが)
そういえば兵隊の服を着たおじさんは足にぐるぐる何か巻いていたよ。
(ゲートルのこと)あれをしているから、あのおじさんは
足が無くならなかったのかな?きっと、そうだ、そうにちがいない。
あれは、どこに行ったら有るんだろう?おじさんに聞いてみようか。
子どもなりに一生懸命、「足が無くならない方法」を考えました。
原爆が落ちたら、足どころか、人間の体丸ごと一瞬のうちに
無くなってしまうことなど、まるで理解できませんでした。


それから、おそるおそる、大人に聞いてみました
「原爆は、今度、いつ落ちてくるん?」
「もう、落ちん」
「ほいじゃ、なんで原爆、落ちたん?」
「あんなにひどい爆弾じゃとは誰も知らんかった。
落としたもんも、落とされたもんも知らんかった。
今は、みんな知っとるけ、もう、誰も落さんよ」
「どうなったら、戦争になるん?」
「もう、戦争はない」
「なんで?」
「日本は、もう、戦争をせん、いうて決めたけぇ、戦争はない。
法律で決まっとるけ、戦争はない」
それからは、時々、「原爆はこわい」と思うたびに
この時、大人にきっぱり「戦争はない」と言われたことを思い出しました。
「どうして戦争になったの?」
「おもちゃが一個しかなかったら
他の子と取り合いになってケンカになることがあるじゃろ」
「うん」
「それと一緒で、戦争は、国と国が、土地を取り合ってケンカするんじゃ。
国で一番えらい人同士がケンカするのが戦争じゃ」
難しいことはよくわかりませんでした。
「ケンカなら、仲直りするよね」
「そうじゃ。仲直りしたけぇ、日本とアメリカは仲良しになっとるじゃろ
もう、ケンカはせん、ゆうて約束しとるんじゃ」
「約束なら破らないね」
「ほうじゃ。もう、戦争はない。」



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こどもの頃の話です。
「けんか」を無くするのはとても難しいのだと思います。
でも、難しくても、「けんか」した人は、いつか必ず「仲直り」すると
大人になった今も信じています。
ばかげている、戦争はそんな単純な物じゃない、と言う人も大勢居ます。
でも、私は、時間はものすごくかかっても、いつか必ず「仲直りする」と
確信しているのです。根拠は何もないけれど、そうとしか思えないのです。

たわいない話でした


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こどもの頃、仲良し同士が一緒になって、他の人と「ケンカ」するのは
ほんとの友達じゃない、って大人に怒られたことがあります。
一緒になって「悪い人」をやっつけるのが
本当の友達だと思っていましたから、なんで怒られなきゃいけないのか
よくわかりませんでした。

でも、今なら、わかります。