辻音楽師な日々

現代の竪琴「ライア」を弾いています。              BBS http://rara.jp/leier

手帳


病院等で受付の順番を待っていると必ず見かけるのが原爆手帳。
元々広島に住んでいる年寄りの多くは、保険証と一緒にこの手帳を差し出す。
年に一度は原爆検診を受け、そのデータも保存される。


8年前に無くなった祖母は手帳を持っていなかった。
被爆はしているが、申請をしなかったのだそうだ。


祖母は40年以上も経ってから甲状腺ガンになった。
被爆しなくてもガンになる事はもちろん有る。
が、とにかく原爆放射線研究所がある大きな病院に入院していた。

喉が腫れ上がった異様な姿を、「被爆の典型的な症例」とかで、
チェルノブイリからの視察団の前で曝された。
手術でとった巨大な瘤は、ばあちゃんが死んでしまった今も研究室で
ホルマリン漬けになっているはずだ。


それでも、ばぁちゃんは原爆手帳を持たなかった。
原爆に遭った、ということを認めたくない、
いや、それが現実だと思い出したくないのだ・・・と、親しい人は説明してくれた。