辻音楽師な日々

現代の竪琴「ライア」を弾いています。              BBS http://rara.jp/leier

通夜

彼女は、まだまだ生き続けるつもりだった。
元気になって、ライアを弾いて
同じ病棟の人にみんなに聞かせたいんだ、
とそう語っていたそうだ。


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斎場のホールはたくさんの 参列者で溢れていた。


不思議にとても心地良い「気」が流れてくる。
この暖かさはどこから来るのか?
それは、彼女を慕って集まってくる人々。
そして、 彼女自身。
悲しくない訳はない、泣きそうになるのをこらえている
参拝者に「元気出して!」と彼女がかけている
そんな不思議な感じ。


厳かな雰囲気の中、読経が流れ儀式が進んでゆく。


終わってから係の人と明日の打ち合わせ。
明日の葬儀でライアを弾くことになっている。
普段の本番とはまったく違う。
重たくない、と言えば嘘になる。


いや、大丈夫。
全然、大丈夫。
彼女の前で弾くのに何の心配も有る訳はない、
私が弾くライアの音色を心底愛してくれていた人。


「今日は、こんな曲が聴きたいですね」


彼女は、きっとそう言ってくれるに違いない。
声にならない声、言葉にならない言葉で
微笑みかけてくれるに違いない。