今日もホスピス
9日ぶりですね。
入院してすぐの頃は色々な人がひっきりなしに出入りされていたそうです。
でも、今は病室はとてもひっそりしています。
たくさんの人が彼を慕って、頼りにして、元気づけられて来たらしいです。
その人の体力がはっきり目に見えて日に日に衰えてゆくわけです。
そっとしておいてあげたいとかショックで正視できないとか、
色々あるのだと思います。
実は、私はこれで彼に会ったのは五度目です。
最初の2回は、彼がまだとても元気だった頃で
たくさんの人に囲まれていました。
3度目は、このホスピスで一緒に弾きました。
その時は、既に声が出なくなってましたが、それでも息の音だけで、
色々と楽しいお話をしてくれました。
彼は、いつも誰かに囲まれていて、私はいつもその輪の外側にいたし
敢えて中に入る必然も感じてませんでした。
正直、どうして皆さんがそんなに彼と話したがるのか
それもピンと来てませんでした。
それなのに、何故、今この人の前でライア弾いてるんだろう。
私は、彼の事を何も知りません。
言葉を交わした事もほとんどありません。
話もできなくなり、自分で動くこともできない今、
私が彼と会話する方法は、ただ、淡々と弦を響かせるだけです。
そんで、足をさすったり、不安に震える肩をそっと抱くだけです。
だけど、ライアは、アルト君は何の憂いもなく、いつものように
気持ちよさそうに歌ってくれます。
今日もまた うとうと眠りにおちていきました。