辻音楽師な日々

現代の竪琴「ライア」を弾いています。              BBS http://rara.jp/leier

友人への手紙3

父はずっとICUに入っています。

先生の指示で、音楽が流れていると結構落ち着くということで、
父の枕元にはCD-MDラジカセを置いています。

2日前の夜中に、血圧が急に下がり、病院から呼び出しがありました。行ってみたら、上が40ぐらいしかなかったのですが、思ったより顔色は良かったので声をかけ、思いついた歌などハミングしていたらてぱちっと目を覚ましました。2時間ぐらいで血圧が60ぐらいまで回復し、とりあえずは安定してきたというので自宅に帰りました。
次の日の昼間、病院へ行くと母がヴンダーリッヒの「詩人の恋」のMDを持ってきていました。全曲かけ終わった頃、なかなかそれ以上回復しなかった血圧が70を楽に越えまていました。

父は意識はあるのですが、声帯が麻痺してしまっているので声が全く出ないのです。おしゃべりな人が話せないというのはかなりつらいものだと思います。(わが家ではパパゲーノ状態と呼んでいる)ですから、私と兄はもしかしたら歌曲を聴かせると悲観するのではないかと敢えて避けていたのですが 母はあまりこだわらずとにかく好きな曲を、と持ってきた様です。

一緒に気持ちよく歌ったのか、声が出なくて悔しかったのか、あるいは両方なのかはわかりませんが、心を揺さぶられたことは確かです。 兄と話して結果的に血圧が上がるのは良い事だから・・・と思うことにしました。

で、今日の昼前、リートより少し華やかな物を、と息子にヴンダーリッヒのアリア集を持たせ面会に行きました。父は涙を流して喜んだか笑ったか泣いたかよくわからない反応をして思惑通り(?)血圧は上昇してきました。夕方もう一度顔を見に行くと、ほぼ正常値に戻っておりました。

点滴の抗生剤が効いたのかヴンダーリッヒが効いたのかは定かではありませんが、今はとりあえず落ち着いています。